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校長先生のお話

2010年01月25日のお知らせ

挨拶をしよう

 今日は、今年度折に触れて話をしている挨拶や登下校時のマナーについて、再度話をしようと思います。

 明治時代の劇作家に岡本綺堂という人物がいます。彼が書いている話が、以前読売新聞に載っていたので紹介します。明治の中期ごろですが、綺堂がイギリスの書記官ウィリアム・アストンと神保町を歩いていた時です。道幅が狭く、商店の品々が道をふさいでいて、その雑然とした街並みが体裁悪く、岡本少年は恥ずかしく思ったのですが、アストンは言います。「気にすることはありません、街はいずれ美しくなり、東京は立派な大都市になるでしょう。でも、そのときに」-アストンは続けたといいます。「道を行く人々の顔は果たして今日のように楽しげでしょうか。」

 つまり、明治の日本は街並みはきれいとはいえないが、お互い同士がぶつからないように「肩引き」をしたり、雨のしずくが相手にかからないようにする「傘かしげ」をしたりすることで、思いやりのある、暖かい雰囲気の中で皆が楽しく暮らしていたわけです。反対に、このような相手に対する思いやりを皆が持っていなければ、どんなに街並みがきれいになったとしても人間関係はささくれ立ったぎくしゃくしたものになっていくでしょう。アストンはこのことを言いたかったのでしょう。

 挨拶をするとか、登下校時のマナーに気を配るということは、このことにつながるものです。今年1年を通じて、学校内での挨拶は随分よくなりました。職員室のドアを開けて先生が出るのを待ってくれる生徒も見かけるようになりました。朝だけでなく、昼でも「こんにちは」と挨拶をする生徒もいます。でも、一方でまだ挨拶のできない生徒はいます。また、それ以上に学校外での態度はまだまだ改善の余地があると思います。電車の通路に大きな鞄を置き、通行の邪魔になっているのにそのまま放置している生徒、登下校の通学路を道いっぱいに広がって道行く人の通行の妨げとなっている生徒などです。それらの生徒は意図してそのような他人の迷惑になるような行動を取っているわけではないと思いますが、それではいけません。相手が迷惑していることが分かるような人間にならなければいけません。

 社会生活を営んでいる私たちの暮らしは、ほんの少しの思いやりや気配りを行うだけで随分気持ちのよい毎日が過ごせるのです。六甲は最寄りの駅からの通学路が長い学校なので、登下校で出会う人たちの数は当然多くなります。トラブルも起こる確率が高くなるかもしれませんが、そこは見方を変えて逆の発想をしてみましょう。君たちが気持ちのよい応対をすれば、出会う人たちも気持ち良く1日を過ごすことができるのです。それほど難しいことではないと思います。

 時々外部の方から六甲生に対するお褒めの手紙や電話をもらうことがありますが、内容を見ると「この程度のことで喜んでくださっているのか」と思ってしまうぐらいのささいなことが相手の心に留まっているのです。「迷惑をかけない」という守りの姿勢ではなく、「相手に気持ちのよい1日を送ってもらおう」という積極的な姿勢で挨拶やマナーを遵守してくれるといいと思います。
これも“Man for Others”ですね。