在校生・保護者の方へ

HOME › 在校生・保護者の方へ > 校長先生のお話

校長先生のお話

2010年04月08日のお知らせ

失敗をおそれず、チャレンジを

 昨日の始業式・入学式に続いて今日から授業が始まります。6学年がそろって朝礼を行うのも久しぶりのことですね。

 昨日の始業式の話は、年度の初めにあたってそれぞれ決意を新たにして、目標を作り新しいことにチャレンジしていってほしい、そしてそれには主体的に行動することが大事である、というような内容の話をしました。

 今日はその話の続きにあたる話です。昨日の話では一大決意をして新しいことに踏み込んでみて成功した例を紹介したわけですね。確かに決心をしたらやり遂げてほしい目標はあります。たとえば、今年は遅刻をしない、そのために7時に起きていたのを6時半に起きるようにする、といったような目標はがんばれば達成できる目標です。ところが、たとえば、勉強をがんばって成績を5点上げるとか、試合に勝って予選を突破するといった目標はどんなにがんばっても達成できないことがあります。能力の限界もあるだろうし、相手もあることですから当然でしょう。むしろがんばったけれど達成できなかったというケースの方が現実には多いと思います。

 今日はそのような例を紹介します。昨年の7月に朝日新聞に載っていた記事の紹介です。

 春の選抜高校野球は沖縄の興南高校が優勝しましたね。ところで、2007年に夏の大会に大分県代表となった学校は楊志館高校という高校でした。このとき、高2でレギュラーとして甲子園に行った選手の一人に佐藤翔司君という生徒がいました。彼は翌年、チームの主将になるのですが、この年、同級生でただ一人甲子園に行けなかった生徒がいました。マネージャーだった大崎耀子(あきこ)という女生徒です。彼女は明るい性格の生徒で、打撃が得意でなかった佐藤君に付き合って遅くまでティー打撃のためにトスを出してくれ、的確なアドバイスもくれたりしたのですが、地方大会が始まる前ごろから欠席がちになります。実は彼女はがんに冒されており、治療に専念しなければならなくなり、そのため甲子園には行けなかったのです。

 翌08年、佐藤君は主将となりました。しかし、あっこのがんは末期で、やがて腰に転移します。彼は絶対にあっこを甲子園に連れて行くと誓って猛練習をします。あっこは野球部を応援するために治療をやめ、地方大会が始まるとベンチに入りました。
しかし、地方大会の初戦で楊志館高校はコールド負けを喫します。佐藤君はチャンスに凡打してしまったのです。負けた直後にベンチの前で撮った写真があります。感染予防のため大きなマスクを着けて痩せたあっこが顔をくしゃくしゃにして泣いている。その横で佐藤君があっこの肩に手を置いて、こちらも顔がゆがんでいる。佐藤君は悔しかったと思います。さぞかし無念だったことと思います。その3ヵ月後にあっこは容体が急変し亡くなりました。

 このように、努力しても報われないこともあります。でも、佐藤君の努力は無意味であったのでしょうか。私はそうではないと思います。佐藤君は高校卒業後、地元の機械製造会社に就職して、軟式野球部に所属して野球を続けています。相変わらずチャンスに凡打することもありますが、その時は笑顔を絶やさず「明日は打てるよ」と言ってくれたあっこのことを思い出して、明日を信じて前向きに生きるようにしている。悔しい経験をバネにして、明るく前向きに生きる生き方を学んだわけです。あっこのために全力でがんばったことで人間として大きく成長したわけです。

 君たちには、がんばっても成功しないことも多々ありますが、失敗を恐れず、むしろ失敗したことで得るものも大きいということを信じて、何事にも果敢に挑戦していく人間になってほしいと思います。今年度君たちが立てた目標に向かって努力するとき、失敗を恐れないという強い気持ちを持ちながらがんばってください。