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校長先生のお話

2013年04月10日のお知らせ

1学期始業式

 3学期終業式から20日ほどしか経っていませんが、随分学校の雰囲気が変わりました。 講堂棟の改修が終わり、第2グラウンドの人工芝生化もほぼ完成しました。 グラウンドの真ん中には六甲学院のロゴマークが入りました。 外構工事も終わり、緑が随所に植えられてきれいになりました。 そのようなことから学校全体に落ち着きが出てきたようです。 それを受けて浮き浮きした気分になったのは私だけではないのではないでしょうか。 私には今年の桜はことさらきれいに見えました。

昨年一年間は75周年、75周年と言い続けてきました。 そして今、76年目に入りました。 新たな25年の始まりです。 今年卒業した70期生は大学受験、がんばってくれました。 後に続く後輩に大きな自信を与えてくれました。 君たちにとって励みになったことと思います。 そのような昨年度の成果を背景に、力強く希望を持って前に進んでいく年になってほしいと願っています。

さて、年度初めにあたって、今日は“Man for Others”に続く“With Others”について考えてみたいとおもいます。

現在、日本は政治・経済・外交、色々な面で厳しい状況に置かれていることは皆知っていると思います。 それらの状況を打破するために各界の有識者の人たちがそれぞれの立場から提言を出していますが、私が目にした範囲では、立場や力点の置き方はもちろんそれぞれ違いますが、通奏低音のように聞こえてくるのが、「弱者を支えることの大事さ」と「小規模でもいいから同志(仲間)を増やすこと」の二つです。

「弱者を支えることの大事さ」と「小規模でもいいから同志(仲間)を増やすこと」、これは“Man for Others With Others”の姿勢とぴたりと一致します。 そういえば、東日本大震災後よく耳にした「絆」はまさに“With Others”そのものですね。

ひとりでも現状を変える力があることはもちろんそのとおりです。 私も1年半ほど前に谷津干潟のごみ拾いをした森田三郎さんの例を紹介しましたね。 鳥が棲息するまでに谷津干潟がきれいになった運動の口火を切ったのは森田さんで、このような人が増えると社会はもっと変わると思います。 ただ、森田さんのやっていることを見て近くに住む主婦が手伝うようになり、賛同者の輪が広がっていったことが大きな成果につながったことも事実です。

“With Others”のOthersには二つの側面があります。 支えてくれる仲間としてのOthersと、立ちあがった人、孤立無援の人を支えるOthersに自分がなること、つまり自分がOthersであること、の二つです。

旧約聖書の「イザヤ書50章8-9」に次のような言葉があります。

「わたしの正しさを認める方は近くにいます。
誰がわたしと共に争ってくれるのか  われわれは共に立とう。
誰が私を訴えるのか  わたしに向かってくるがよい。
見よ、主なる神が助けてくださる。
誰がわたしを罪に定めよう。 」

ここでは、正しさを認める「誰か一人」がいること、助けを求める人にとって共に立つ仲間がいること、このような仲間がいれば立ち上がった人は勇気づけられることを説いています。 そして、そのような人間を「主なる神は助けてくださる」と結んでいます。 共感する仲間を作ることとともに、正しさを認める「誰か一人」になることの大事さにも気が付いてほしいと思います。 支えるOthersに自分がなれるようになりたいものです。

少し角度を変えた話をします。 最も感動的で幸福な瞬間を至高体験とか、ピーク経験といいます。 試合で優勝した、志望校に合格した、文化祭や体育祭を成功させた、などのときに味わう感動経験のことです。 至高体験は人間にとって非常に大切な体験で、これにより人間は成長していきます。

至高体験は、たとえば独りで山登りをして感動的な景色を見たときなど、独りで経験する場合ももちろんありますが、日本の子どもを対象にした聞き取りによると、家族や友達など親しい人がいるときに経験することが多いとの結果が出ています。 気心を許せる間柄の人間がいるときに経験することが多いということです。

「人間の成長」という観点からも“With Others”はとても大事な姿勢だということが分かります。 今年は、“Man for Others”の後に続く“With Others”についても意識していってほしいと思います。

毎年、年度初めにこの1年の目標をあげ、目標に向かって君たちにがんばってもらっていますが、今年度の目標は“With Others”に大いに関係する要素である「発信力」をあげることにしました。 つまり、協働のためにはまず自分の考えていることを相手に伝えて理解を得なければならないわけです。 ある国際会議に出席してスピーチをした日本人が、質問が何も出なかったので、自分の話に皆感心していたと思った人がいましたが、これはそうではなく質問がないのは質問するほどの内容がなかった、ということだったのです。 内容のないスピーチ、プレゼンでは相手にされない、つまり共感もされず仲間の輪も広がりません。

そのような意味も含めて、今年は「発信力」を高めることを意識し、さまざまな活動も「発信する場」としての位置づけをしながら積極的に関わってください。

これまで目標にしてきた「挨拶・マナー」や「授業に向かう姿勢」については、良くなりましたが、完璧に達成したわけではないので、これらについても引き続き努力してください。

 では、今年度、力強く希望を持って前を向き、張り切って学校生活を送ってください。