在校生・保護者の方へ

HOME › 在校生・保護者の方へ > 校長先生のお話

校長先生のお話

2009年09月07日のお知らせ

スポーツの秋をがんばろう

 高校と中学の総体は終わりましたが、秋は秋季大会や新人戦がありますね。私はスポーツをほとんどしない人間で、また最近はTVのスポーツ中継もあまり見ませんが、先日久しぶりでマラソンを見ました。マラソンはただ走るだけの単調なスポーツのように見えますガ、見ていると実は駆け引きがあって大変面白い競技です。ちょっとスパートしただけに見えるのに、それまでついてきていた選手がみるみるうちに引き離されていくことがよくあります。これには体力の限界も当然あるでしょうが、それ以上にどうやら脳の働きが関係しているらしいですね。

 1学期にも紹介した脳神経科の林成之先生がオリンピック強化合宿で強化選手に対して指導をした内容がNHKの番組で紹介されていました。ご自身の講演でも話をされていることですが、たとえば水泳の北島康介選手を例にとると、北島選手は最後のターンをしてからゴールまでの最後で失速する傾向が当時あったらしいです。これは林先生によると、もうゴールだと思うと脳の自己報酬神経群がもう終わったと判断して、その結果血流が高まらなくなることが原因だそうです。だから、ゴールはまだ先だと言い聞かせることで運動能力を落とさないようにすることが大事だとアドバイスをしたそうです。その結果は、皆も知ってのとおり、北島選手は北京オリンピックで金メダルを取ることができました。

 これは自分の経験に照らしても正しいということが分かります。私は毎年夏場になると、山のキャンプの引率に備えて近くの山に登ります。頂上手前に長い階段があって、結構しんどいのですが、そのとき私はいつも上を見ずに登り、明らかに半分を過ぎたと思える距離に来てもまだ1/3しか登っていないと自分に言い聞かせるようにしています。そうすると最後までペースを落とさずに登ることができます。

 マラソンも同様です。追い上げてきた相手が追い付き、これで勝負になると思ったタイミングをはかってスパートする。追いついた、と思ったときに自己報酬神経群が働くので、ここでスパートされて再び抜き去られると、もうだめだという指令が脳にいき、スパートについていけなくなるわけです。マラソンに見られる駆け引きにも脳の働きで合理的に説明できるのですね。

 もちろん自己報酬神経群の働きは勝負に関係する多くの要素の一つであって、これが働いたから勝てるというものではありません。ですから、要はただ黙々と練習をしてテクニックを上達させるだけでなく、練習以外でも、今あげた脳の働きの活用や、緊張を和らげる工夫、あるいはイメージトレーニングなどをおこなって自分のもてる力を最大に発揮してがんばってほしいと思います。

 最後に一言付け加えると、運動することで脳内の有酸素運動が活発になってより多くの酸素が脳細胞に供給されれば認知能力も高まることが知られています。つまり学習にも効果があるわけです。運動は学習にもよい効果を与えるということも知っておいてください。