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校長先生のお話

2009年09月24日のお知らせ

新しい文化を創造する

 最近、ビートルズの全アルバムが最新のデジタル・サウンドでリミックスされ、新たにCD化されて発売されました。全14アルバムがすべてアルバムヒットチャート100位以内にランクインしたと新聞で報道されていました。ビートルズの人気はいまだに根強いものがあります。ビートルズの現役活動時期と私の中学・高校時代とは完全に重なるので、私もビートルズに対する思い入れは大変強いものがあります。

 さてそのビートルズに対する評価ですが、40年以上も経過すると当時の熱狂ぶりから一歩引いて、冷静にビートルズを評価しようとする傾向が出てきています。これ自体は大変結構なことで正当な評価がなされるとよいと思います。ただ、ビートルズの音楽がそれ以前のR&Bやプレスリーなどに代表されるロックンロールから影響を受けていたことや、当時からビートルズ以上のテクニック持っていたグループもいたことなどをことさらに強調して、ビートルズの革新性をあまり評価せず、音楽史の連続性のなかの1つのグループとしてしか評価しない論評も見受けられるのですが、これはどうでしょうか。

 話はクラシック音楽の世界に飛びます。クラシック音楽発展の流れを見ると、たくさんの作曲家や演奏家たちが西洋音楽の黎明期からさまざまな工夫、苦労を重ねて、表現力を高め、聴く人に訴えかける音楽を作りあげてきました。たとえば、華やかな感じを表現するときには装飾音符を多用したり、出したい音の上下の音を往復させるターンと呼ばれる技法を使ったりします。また、気持ちが高揚してくる時の気分は上昇音階を使う、逆に沈んだ時の気持ちを表現するときは下降音階を使うなどですね。また、協奏曲は3楽章で作り、交響曲は4楽章で作るなど、演奏上の形式も定まってきます。こうして一つの技法・形式が確立すると、その規則に従って作曲をすれば一定の見栄えのする曲ができるようになります。

 しかし、やがて今までの形式では自分の表現したい音楽が作れないと感じ、従来の手法に飽き足らなく思う作曲家が出てきます。そういった作曲家は、従来の枠を尊重しつつも様々な工夫をこらして自分の表現したい音楽を作り上げようとします。たとえば、これはレナード・バーンスタインがTV番組で話していたことですが、ベートーヴェンは従来の交響曲の形式を踏襲しつつも、楽譜の冒頭に、緩やかなスピードの楽章を早めに演奏するよう指示を与えることで従来と異なる曲調の音楽を作り上げたそうです。簡単なことのように思えますが、当時の人にとっては大胆な試みだったのですね。このように、一旦伝統的な手法に手が加えられるとそこからの変化は容易で、新しい試みが色々出され、新しい形式の音楽が出来上がっていくわけです。

 ビートルズもそのようなグループだったと思います。たとえば、前奏なしで最初から歌が始まる曲はそれまでにもないことはなかったですが、いきなり絶叫に近い声で始まる曲はありませんでした。また、ドラムはリズム楽器ですから、それまでは歌を妨げないようにバックビートで打つのが普通でしたが、ビートルズは今から聞けばおとなしい感じではありますが、頭打ちのビートを取り入れてドラムをアピールさせるなど、今までにない雰囲気の音楽を演奏して、当時の若者に強烈にアピールしたのです。それまでの音楽の影響を受けているとはいえ、やはりビートルズは偉大なグループでした。

 さて、君たちですが、文化祭が終わりましたね。去年もよかったですが、今年も大変よい文化祭だったと思います。では、来年はどうでしょうか。これまでの文化祭に満足であればそれを踏襲すればよいと思いますが、もし自分たちのやりたいことが別にあるのであれば、がんばって新しい企画を作っていくとよいでしょう。期待しています。