休校中のおすすめ本③ 2020年05月11日

G.W.も終わりました。

公園でキャッチボールなんかしている中高生を見ると、みんなはどうしているのかなと

気になります。運動もしていますか?

筋トレのイラスト「腹筋をする男性」

 

さて、今回は司書Sです。4月に中山七里、ガンガンまとめ読み、再読していました。

もういちど2

もういちどベートーヴェン  中山七里著  宝島社

生徒にも人気のある中山七里さんの”音楽ミステリー”最新刊。これ1冊だけ読んでも楽しいけど、シリーズで読むと登場人物の成長や、そんなことがあったのか!な過去も見えてくるから、物語の世界が広がっていきます。(相関関係がややこしくなるともいう・・・海堂尊さんの小説ほどじゃないけど)

書き出しが、「ベートーヴェン『ピアノソナタ第30番』は序奏なしでいきなりはじまる。」です。いやいや、小説としてもいきなりやし。曲がすぐ頭に浮かぶ人どれくらい居る?。なのでYouTubeでサーチして、聴きながら読んでみてはいかが。流れるピアノの音と、それを表現する言葉を同時に味わうという贅沢。司書が“ながら読み”を勧めてええのんか微妙なところですが、このシリーズを読むときは実際に曲を聴いてみてほしい。長い休校やし、面白動画以外にもYouTube活用ね。

今回は、主人公・岬洋介が司法修習生をしていた頃の事件です。同期の修習生・天生高春は岬にライバル心を抱きつつも惹きつけられ、共に事件を解き明かしていきます。友情って不思議なもんで、最初はなんやこいつ、と思った相手が生涯の友になったりしてね。ミステリーによくある型で、二人はホームズとワトソンみたいでもあります。そしていつものことながら、誰が犯人か?は最後にどんでん返しがありますから、気持ちよく転がされてください。

時間があるからシリーズで読もうという人は、やっぱり最初に出た『さよならドビュッシー』からやね。どんでん返しが半端ないです。映画にもなっていますから、ゲームの合間にいかが。橋本愛ちゃんかわいいし。

※写真では、『いつまでもショパン』が欠けています…今、貸出中のようです

 

中山七里2

さらに中山七里。

テミスの剣  文藝春秋社

テミスは“掟”という意味でギリシア神話の法の女神の名でもあります。冤罪事件とそれをめぐる警察・司法の在り方を考えさせられるミステリー。殺人を犯した人物だけが悪なのか?正義とは?組織とは何なのか…と悶々としながら読みました。
猟犬のように事件を追う渡瀬警部は、中山作品のあちこちに登場する強烈なキャラクターで、数冊読むと彼が登場する話を全部読みたくなってくるあたりは、東野圭吾の「加賀恭一郎シリーズ」みたい。
グロい死体の描写が平気な人は「カエル男」、医学部を目指すみなさんなら、若い女性医師が主人公の法医学ミステリー「ヒポクラテスシリーズ」なんかもいいかな。
いずれもドラマ化されていて、『テミスの剣』と『ヒポクラテスの誓い』は、今A〇azonプライムなら無料ですし。前者はテーマが重いのでしっかりした社会派ドラマで俳優陣の演技も見応えたっぷり。後者はとにかく北川景子の表情がいいですね!文庫は2冊目、『ヒポクラテスの憂鬱』も出ているので、ドラマのシーズン2も作ってほしい~。

それでもまだ中山七里。

御子柴シリーズ 2

 

贖罪の奏鳴曲(ソナタ) ほか  講談社

こちらは「御子柴弁護士シリーズ」。タイトルを見ればわかりますが、これもまた音楽(ベートーヴェン)が出てきます。できれば聴きながら読んでみてください。
主人公は、昔殺人を犯した少年だったという設定。司書Sは神戸で現実の少年A事件を経験したため、思い出したくない、読む気になれなかったシリーズ。ところが休校で少し時間もあるし…と本を手に取ったら一気読み。学校閉鎖中、書店に続きを買いに行きました。
最後にどんでん返しがあるのは中山作品の基本ですが、法廷弁護でのどんでんであり、それがミステリの謎解きでもありますからドキドキが倍ですね。彼が弁護するのは犯人なのか、それとも…?
シリーズ1作目は御子柴と渡瀬警部という濃いキャラクター同士のぶつかり合いも見どころです。水と油かと思われたこの二人、3作目では粋な“サポート”で一瞬だけ警部が再登場。これは互いを認め合ったってことなんでしょうね。
中山作品をいくつか読んで気が付くのは、タイトルにもある“贖罪”。罪に対する償いやね。例えば渡瀬警部も御子柴も、過去に取り返しのつかない間違いを犯しています。試験で追試になった、友達を裏切った、親に嘘をついた…生きてれば失敗や罪は誰にだってある。でも、もし人の命に係わるような間違いを犯してしまったら?それに気が付いた瞬間…そしてその後の人生を、どう生きていけばいいんでしょう。「償いというのは言葉じゃなくて行動だ。だから懺悔は口にするな。行動で示せ」という少年院教官の言葉が胸に刺さります。
シリーズは 『追憶の夜想曲(ノクターン)』、『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』、『悪徳の輪舞曲(ロンド)』と出ていて、これもTVドラマになっています。WOWOW版とフジテレビ版。司書SはWOWOW版見ました、すごい熱演で、途中で止められないから風呂場にタブレット持ち込みました。みんなはやらないように。

※写真には『贖罪の奏鳴曲』がありません、貸出中みたい