おすすめ本④ 2020年05月14日

司書Hです。今回は新書と文庫を紹介

♣立ち止まること♣

5月8日の朝日新聞に医療人類学者の磯野真穂氏のインタビューが載っていました。今私たちは、新型コロナの対策でメディアや行政の通達で毎日のように個人的な生活の様式までも指示され、規制されています。私自身もそれに準じた行動をしない人に対して批判的になったりします。これが異質なもの排除する心理なのですね。本当にぎすぎすした情けない気持ちになっています。管理社会への危惧、リスクがある状態の時のモラルなど、磯野氏はこの状況を文化人類学者として俯瞰していました。その磯野氏の著作『医療者が語る答えなき世界』を読んでみましょう。この本では医療者に関する8つのエピソードをインタビューとともに紹介しています。今回のコロナ禍でもそうですが、医療に関して私たちは、より確かな情報を欲しています。「科学的に見て」、「エビデンスがある」、なんと安心できる言葉でしょう。著者は「文化人類学とは立ち止まることを奨励する学問である」と述べています。著者は医療現場をどのように見ていくのでしょう。私たちには正論ではなく、側面から立ち止まって見ている人も必要です。

 

♥マリス博士にありがとう♥

ここでもう1冊、キャリー・マリス『マリス博士の奇想天外な人生』を紹介します。

PCR法を開発した研究者の自伝です。破天荒な科学者は自伝も好き放題、向こう三軒両隣に聞こえるように書いています。若いころ、宇宙物理か生化学かの道を迷った時、女性との会話ができるので、生化学(クスリの話ができる)を選んだそうです。地球温暖化を否定するようなことも書かれてありますが、自然に対してはとても謙虚な姿勢であるようにみえました。彼はサーファーです。訳者は福岡伸一氏です。あとがきで福岡氏も書き出していますが、この一文は今の心に響きます。「人類ができることはと言えば、現在こうして生きていられることを幸運と感じ、地球上で生起している数限りない事象を前に謙虚たること、そういった思いとともに缶ビールを空けることくらいである。リラックスしようではないか。地球上にいることをよしとしようではないか。最初は混乱があるだろう。でも、それゆえに何度も何度も学びなおす契機が訪れるのであり、自分にピッタリとした生き方をみつけられるようにもなるのである」1992年にノーベル賞化学賞を受賞しています。昨年の夏に亡くなりました。

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