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校長先生のお話

2011年04月08日のお知らせ

中学入学式式辞

 本日はあいにくの空模様となりましたが、雨が少なく乾燥していた冬場を顧みると、雨に濡れそぼった桜の花が心なしか喜んでいるようにも見えます。

 74期新入生の皆さん、六甲中学校入学、おめでとうございます。君たちは六甲中学に入るために一生懸命勉強してきました。時には歯を食いしばって頑張ったこともあったかと思います。君たちのがんばりは無条件で称賛されるべきことです。私は本日入学式を迎えた新入生に対して心からおめでとうと言いたいと思います。

 君たちが六甲の中学生になってから最初の登校日は中1オリエンテーションでした。初日は緊張のためか、あるいは慣れない制服に身を包み、大きなかばんを持って坂道を登った疲れからか、一時体調を崩す生徒も見受けられましたが、2日目には元気になり早々と友だちもでき中庭で楽しく遊ぶ光景も見られました。これからの学校生活で友だちをたくさん作り、クラブ活動など課外活動に積極的に参加し、勉強にも一生懸命取り組み、充実した6年間を送ってくれることを願っています。

 ところで、君たちが入学した六甲中学校とはどのような学校なのでしょうか。すでに知っていることかとは思いますが、六甲入学に際して、自分の入学した学校がどのような教育方針を持った学校なのか改めて確認しておくことは大変大事なことなので、ここで一緒に考えてみたいと思います。

 話は今から450年以上前に遡ります。16世紀のヨーロッパにフランシスコ・ザビエルという人がいました。スペインの出身で、パリ大学に入り、哲学を学んでいました。そのパリ大学に、やがてイグナチオ・ロヨラという人が入ってきました。ザビエルより15歳も年上ですからおじさん学生といったところでしょうか。しかし、このロヨラという人は気高い信仰と燃えるような情熱・信念をもった人物で、自分の信じるイエス・キリストの生き方について熱心にザビエルらに語りかけました。イエスという方は、「私は仕えられるためではなく、仕えるために来た」という言葉に表されるように、世の中の恵まれない人、貧しい人の立場に立ち、神の国の到来を説いてキリスト教を開いた方です。ザビエルは情熱・信念の人ロヨラから決定的な影響を受け、ロヨラと行動を共にする決意を固め、ロヨラを創始者として結成された修道会の創設メンバーの一人となりました。そしてイエスの教えを広めるために1549年、数千キロの波濤を越えて日本にやってきたのです。こうして日本にキリスト教が初めて伝わりました。

 ザビエルは日本に滞在中、熱心な布教を通して多くの日本人と交わり、それらの交わりを通して、日本人が礼儀正しく、知識欲に燃えた民族であることを知り、日本人は自分がこれまで出会った民族の中でもっともすぐれているという称賛の手紙を仲間に書き送っています。

 イグナチオ・ロヨラがフランシスコ・ザビエルらとともに創った修道会こそがイエズス会でした。ザビエルは、日本で学校を設立する望みを持っていました。日本での布教の許可をもらうため天皇に会見する目的で京都にまで来ています。その目的はかないませんでしたが、この後に続く鎖国時代が終わるとイエズス会士は明治の末年に再来日します。そして1937年には、日本におけるイエズス会の中学校としては最初の学校を神戸の六甲山の中腹に創設しました。これが六甲中学校です。ザビエルは京都に向かう途中、瀬戸内海を通って堺までの船旅の間にいくども六甲山系を眺めたことでしょう。その六甲山系の中腹に自分の意志を継いだ学校が没後400年近く後に設立されるとはザビエル自身思ってもみなかったことだと思います。君たちはそのような経緯を経て創られた六甲中学の74番目の学年として、今日入学式を迎えたわけです。

 「私は仕えられるためではなく、仕えるために来た」というイエスのメッセージは、イエズス会士のフランシスコ・ザビエルを通して「人々に仕える人間」、「他の人々のために生きる人間、“Man for others”」として、今、六甲学院の教育目標となっています。今日の入学式にあたって、君たちにはこのことを深く心に刻んでほしいと願っています。

ザビエルの生きた16世紀は「大航海時代」と呼ばれる時代で、世界の一体化が進んだ時代でした。グローバルな真の世界史が始まった時代といえます。そのような時代にザビエルは日本にキリスト教という新しい宗教を伝えましたが、彼の活動はそれにとどまっていません。日本の若者をインドに行かせて日本人の視野を地球的規模に押し広げようとしたほか、これは実現しませんでしたが、高度な学識ある日本の仏僧をローマに送って教義論争をさせる構想も持っていました。このように、ザビエルは世界のグローバル化が始まる時に日本に新しい文化を紹介しただけでなく、日本を世界に紹介するための働きもおこなっているのです。

 六甲学院はイエズス会士フランシスコ・ザビエルの意志を継ぐ学校です。六甲で学ぶ君たちが、“Man for others”の精神を養い、ザビエルにならって、神戸、あるいは日本にとどまらず、世界にその精神を発信していくことができるよう期待しています。

 最後になりましたが、新入生の保護者の皆様、本日はご子息のご入学、おめでとうございます。
皆様は、六甲学院の学校案内やホームページに紹介されています「六甲生のプロファイル」をご覧になったことがおありかと思います。「六甲生のプロファイル」とは、“Man for others”を実現するために六甲が独自に作成した教育目標です。プロファイルに書かれている若者像をかいつまんでご説明すれば、ありのままの自分を素直に受け入れ、他の人々の存在を肯定的に受け入れ、強い意志力をもって真理を探し求める姿勢を持つことで、よりよい社会を作り上げようとする人間ということになります。
私たち六甲学院の教職員はご子息を大切にお預かりし、6年後には「プロファイル」に書かれているような志向性をもった若者に成長してくれるよう全力をあげて取り組む所存でございます。保護者の皆様方におかれましては、どうぞ六甲学院の教育にご理解賜り、ご協力をお願いいたしたいと存じます。

 ご子息と保護者の皆様の上に神様の豊かな祝福がありますことをお祈りいたします。また、このたびの東日本大震災で亡くなられた方々が主のみ前で永遠の安息を得ることができますように、また親しい人を亡くされた方々、被災されて苦しんでおられる方々に神様の御憐れみによって慰めが与えられますよう祈りつつ、式辞とさせていただきます。