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月別アーカイブ: 2023年9月

二学期 始業式 校長講話

《2023年8月29日 二学期始業式 校長講話》

 

自分の人生を方向づける大切な出会いについて

 

1 自分を変えた経験を振り返ること

 夏休みが終わり、今日から2学期が始まります。皆にとってどのような夏休みだったでしょうか。どのような人たちと出会い、どのような刺激や影響を受けたでしょうか。些細な変化でもよいので、自分がどのように変わったかを、振り返る機会を持ってくれれば、と思います。

 私たちが、何かと、あるいは誰かと出会って、影響を受け、変えられる経験というのは、時に自分の一生を方向づける大切な出来事になります。始業式の後に、カンボジア研修旅行の報告会として、高2から中3までの参加者たちの体験発表をしてもらうのですが、おそらくその中には、この研修旅行での経験が、これまでの価値観が揺さぶられ自分を変えられるようなものになった生徒が多くいたのではないかと思います。

 

2 自分の人生が変えられる大切な出会いについて

 カトリック六甲教会には昨年から六甲学院35期卒業生の英(はなふさ)神父がおられます。おそらく六甲生で教会キャンプを手伝った生徒から、カンボジア研修での経験を聞いたのだと思いますが、8月20日のミサの説教の中で次のような話をしてくださいました。

 「私たちにとって、特に若いころに自分の人生が変えられるような影響を与える大切な出会いには、大きく分けて二種類あります。一つは、こういう人になりたいと思うような尊敬できる人に出会うことです。素晴らしい先輩や先生、神父などと出会って、影響を受けて変えられることがあります。もう一つは、大変な困難の中で苦しみ助けを必要としている人と出会うことです。」

 この、英神父様の言葉を聞いて、確かにその通りだと思いました。そして六甲という学校は、こういう人になりたいと思えるような人との出会いも、何かできることをさせてもらいたいと思うような助けを求めている人との出会いも、どちらの体験の機会も、行事や課外活動や授業を通して、自分が求めさえすれば豊かに与えられる学校ではないかと思います。

 

3 尊敬し憧れられる人との出会い―体育祭・総行進の体験を通して

 一つ目の、尊敬のできる人やこういう人になれたらという憧れられる人との出会いが、大きな影響を与えて自分が歩む方向性が決まるということを体験している人は、六甲生の中にすでにいるかもしれませんし、これからという人も多くいることと思います。

 例えば、夏休み中に六甲学院の体育祭の総行進を、生徒が作ってゆく姿を放映したNHKの番組「青春100K」には、総行進を小学生の時に見て、その姿にあこがれて、この学校に入学して総行進をしたいと思った中学生の話がありました。

 この番組については、六甲学院の卒業生だけでなく、六甲学院とは直接かかわりのない方々も見て「感激しました」という声を寄せてくださいました。上級生たちが熱心に指導する姿、下級生たちが一生懸命頑張る姿、数か月前から生徒たちが話し合いながら作り上げてゆくこと、伝統を大切にしつつ多様性を尊重し生かす方向で完成させていったこと等、感激した点は人によって様々です。総行進がこうして毎年続いてきた原動力は、先輩たちの熱い思いを後輩たちが練習の中で感じ理解し受け止めて、自分も先輩たちのようにしてゆきたい、という志を受け継いできたことから、生まれてきているように思います。番組の中での中学生の発言の中にあったように、後輩が先輩の姿を見て、こういう人になりたい、こういうことをしてゆきたい、という影響を受けることは、行事を作り上げてゆく中で、多くの生徒たちが体験したことなのではないでしょうか。

 そして、六甲学院の行事や日常の生活の中で、生徒時代に培われた先輩と後輩の関係の親密さ、その影響力の大きさというのは、他の学校では殆ど見られることのないくらい貴重な、六甲学院の特徴であり、良さでもあります。

 この先輩と後輩との親密な関係は、卒業後も長く続いています。例えば夏休み中に行われた行事でいえば、高1の東京・大阪・神戸それぞれの卒業生の職場訪問をする研修旅行や、海外在住の卒業生から現地で話を伺い交流をするカンボジア研修旅行でも、それを感じます。私自身がこの夏休みに直接出会った卒業生は、東京研修1日目の国土交通省46期足立氏、海上保安庁52期真鳥氏、東京大学教授の38期福井氏、名誉教授の30期寺井氏の4人だったのですが、先輩方はそれぞれに総行進の番組を見て自分の生徒時代のことを思い出し、感想を話してくださいました。福井教授は、番組を見ながら血がたぎり胸躍(おど)る思いになったと表現されていました。先輩たちの共通点は、後輩のために自分にできることがあるならばどんなことでもしたい、支援をしたいという思いです。六甲学院を卒業して50年を経て、70歳に近い東京大学の寺井名誉教授は、東京大学から生徒たちの宿泊施設までの数十分、徒歩で炎天下の中を道に迷わないようにと付き添ってくださっていました。そして、無事に目的地に到着したとわかると一言挨拶しただけで静かに立ち去って行かれました。社会的にも非常に偉い方ですし職歴も業績も尊敬すべき方なのですが、こうした姿勢の中に六甲で培われた謙遜さを感じて、人として尊敬すべき方だと思いました。

 六甲学院が、生徒時代に先輩や卒業生の方々と貴重な出会いを経験することができ、お話の内容だけでなく、また社会的立場や業績だけでなく、むしろその人柄や人間性や生き方から、様々な影響を受けて、生徒が人としてより高みへと成長してゆく学校であり続けられたらと願います。

 

4 困難の中で助けを必要としている人との出会いーカンボジア体験を通して

 さて、六甲教会の英神父様が話されていた、自分の人生が変えられるような影響を与える大切な出会いの二つ目についてなのですが、ミサの中で、次のように話を続けられていました。

 「自分は六甲学院や上智大学で本当に尊敬できる先生や神父様に出会ったけれども、本当に自分が人を救うための生き方に賭けたいという思いに変えられたのは、大学時代のボランティア活動で、戦乱によってカンボジアからタイに逃れた難民たちと出会い、国境沿いの難民キャンプの子どもたちと関わったことでした。それが、最も大きな影響を与え、自分が変えられた出来事です。

 私たちには、立派な人と出会って変わることもあれば、本当に困っている人に出会って変えられることもあります。ものすごく苦しんでいる人に出会って、その人と関わることによって、自分の持っていた考え方や価値観ががらがらと崩れて、何が大事なのかを一から考え直すような体験をすることがあります。世界には、先進国で暮らす私たちと同じような生活の中で暮らしている人だけではなく、日本で普通に生活をしていたら想像もできないような貧困のどん底で暮らしているような人たちもいます。そうした助けを必要としている人たちとの出会いは、その人の人生の方向性を変えるような大切な経験になることがあります。」

 

 皆の先輩でもある英神父様は、カンボジア研修を経験した生徒の話を聴いて、教会でこのような話をしてくださいました。英神父様は上智大学時代に私と同じ学年で、上智大学がタイの難民キャンプにボランティアとして学生を送り続けるプロジェクトに参加して、その時の経験をきっかけに人生の方向性を選んでいかれました。一方私は、あるサークルで知り合った新聞記者のご子息から、カンボジアからタイへ命がけで逃れる難民たちの姿を撮影した報道写真を見せてもらって心を動かされ、難民の写真パネルの展示会を大学内で仲間と共に始めました。そこから、募金活動や講演会・チャリティコンサートの支援活動に参加する中で、社会課題や社会奉仕に目覚めていきました。私がイエズス会の中学・高校の教師として、教育の中で社会奉仕的な仕事に携わりたいという願いを持ったのも、そうした経験があったからでした。

 英神父のように直接現地に行って、具体的に困難な状況にある人たちと出会う体験。はもちろんインパクトの大きいことなのですが、必ずしも現地に行って困難な状況の人たちと直接会わなくても、写真や映像や本などとの出会いから、大きく影響を受けることもあり得ます。

 カンボジアに行った生徒たちの体験発表は、直接行かなかった生徒にとっても、大事な体験となりうると考えています。ぜひ、この始業式の後に行われるカンボジア研修に行った生徒たちの発表を、真剣に聞いてもらえればと思います。