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校長先生のお話

「ザビエルについて-創立記念日にあたって」

《2023年12月4日 朝礼 校長講話》

「ザビエルについて-創立記念日にあたって」

 

(1)六甲学院を守り導く守護聖人「フランシスコ・ザビエル」
 
 日本に初めてキリスト教を伝えたイエズス会司祭フランシスコ・ザビエルが、六甲学院を守り導く「守護聖人」です。彼が帰天した12月3日、昨日がカトリックの暦の中ではザビエルの祝日で、六甲学院の創立記念日でした。ザビエルは日本で2年2ヶ月間滞在して宣教活動をしたあと、中国への宣教をめざしました。日本人に対しては、礼儀正しくて善良で知的好奇心が旺盛で、こういう民族にキリスト教をより広く伝え続けられたらと強く願っていました。しかし日本滞在中、日本人のものの考え方や文化に中国の大きな影響があることがわかって、文化や宗教も中国から伝えられてきたことも知り、中国への布教が成功したら、中国から影響を受けている日本での布教活動ももっと順調にいくのではないかと考えました。そこで、中国への宣教を志したのですが、中国本土に入るために、中国の南の玄関口である広東近くの上川島まで来て、そこで高い熱を出して病気になり、1552年12月3日亡くなります。46歳の若さでした。

 

(2)帰天後の不思議な出来事-姿かたちを留めるザビエルの体
 
 ザビエルのご遺体は上川島の岡の中腹に埋葬した後、2カ月半たってからマラッカ(現在のマレーシアの古都・港湾都市)まで運ぶために墓を掘り起こすと、不思議なことに、その体はたった今息をひき取ったと思われるほど生き生きとしていたといいます。マラッカの教会で葬儀が執り行われて、そこに安置されていたのですが、そこで5カ月たってもザビエルのご遺体はそのままだったので、体をさらにザビエルの宣教の拠点になっていたインドのゴアに移すことにして、亡くなって1年ほど経った時に、ゴアの神学院に安置されました。ゴアでも約5000人が集まる壮大な葬儀が行われたと言います。
 ザビエルのご遺体は、今でも10年に1回、人々が間近に見られる形で教会内に置かれて、限られた期間に巡礼のように多くの人たちが世界中から集まってきます。先回が2014年で、一カ月半程の公開の時期(11月23日~翌年1月4日)に約500万人が世界中からお参りに来たと言います。すでに帰天してから460年以上経っていました。

 

(3)私の若い頃のインドでのザビエルとの対面
 
 私は、個人的に初めてインドに行った1984年にその姿と対面しています。六甲学院に教師として赴任した1年目でクリスマスの後、10日程の旅でした。その期間にたまたま公開されていた姿を、ゴアで見ることができました。
 ボンベイに3日ほど滞在した後でゴアに向かい、そのザビエルのご遺体が公開されているという教会に行って、間近に対面しました。当時亡くなってから430年以上経って、その姿は多少茶黒くなってはいましたが容姿はそのままを留めていて、確かにそれは不思議なことでした。巡礼して尊敬の思いで参拝するべきものではあったのですが、私にとっては自分の心が大きく動かされて、何かその出来事の中に大切なメッセージを感じ取るというようなことは、あまりなかったように思います。この体が、日本にまで宣教に来たのか、という感慨はありましたが、やはり、大切なのは死んでから後のことではなく、生きている間の彼がどう生きたかの方なのではないかと思います。

 

(4)生きていた時のザビエル―全てを懸けて困窮している他者に仕える姿
 
 私がザビエルの伝記の中で最も共感するのは、1541年にヨーロッパのポルトガルのリスボンから、インドのゴアに向かうまでの船旅の中での彼の姿です。
リスボンからゴアへの航海にあたって、召使いや特別室や特別食などのポルトガル王からの“特別なはからい”を断って、ほかの乗船客と一緒に甲板の上で暮らしました。当時はアフリカ大陸を南端まで回ってインドに向かうのですが、航海中は無風状態の灼熱で、普通は7ヶ月程でインドまで到着する船旅は一年と一か月かかりました。食べ物が腐り水か足りなくなって人々が次々に病に倒れる中で、夜も寝ずに病人の看病をしたり汚れたものを洗濯したり、心がふさいでしまった人の話を聞き元気づけたりしていました。優れた学識や大きな志を持ちつつ、身近な現実の中で困っている人々がいれば、躊躇なく今持っている体力や気力や時間の全てを懸けてそこに飛び込み関わる姿を、六甲学院にとってのザビエルの人物像として大事にしたいと思っています。
 助けが必要な人に関わるためには決断や勇気(精神力)が必要ですし、具体的に助けるのには健康な体(体力)も必要です。そうした現場の中に、いつでも躊躇なく飛び込み関われる心身を養い鍛えるための教育活動として、六甲学院では授業の合間の中間体操や放課後の徹底した清掃活動、30キロ近くを走る強歩会、施設への全員参加の奉仕活動、そして世界中で困窮している人々に目を向ける心を養うためにインド募金も行っているのだと思います。
 創立記念日にあたって、その日をザビエルの祝日にしている学校として、ザビエルの生き方、人を助ける姿や思いに心をとめながら、過ごしてくれたらよいと思います。