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校長先生のお話

東ティモールの大洪水と募金活動

以下は、2021年5月10日の朝礼にて生徒に向けて話した内容です。

 

東ティモールの大洪水と生徒募金

4月の初めに、東ティモールで大洪水が起こった知らせを受けて、社会奉仕委員会から緊急募金が呼びかけられました。

東ティモールは2002年5月20日に独立した「21世紀最初の独立国」として知られる新しい国です。アジアの中で最も貧しい国の一つです。インドネシア群島のほぼ中央、オーストラリアの北に位置しています。人口は130万ほどで、広さは岡山県の二倍近く、四国を二回りほど小さくした国です。

 

募金は新型コロナ感染の緊急事態宣言発令が間近な時期で、その前の週はインド募金があったばかりで、あまりなじみのない他の国のことでもあり、皆の関心が向きにくいかもしれないと心配しました。それにもかかわらず、生徒募金は94,409円、集まりました。自分の生活のことで心もいっぱいになってしまいがちなこういう時期に、直接には深いかかわりを感じにくいこの国の窮状を知って、校舎に入る通りがけに財布をカバンから取り出して、快く募金に協力をしてくれる生徒がこれだけ多くいることは、学校として誇りだと思います。心根の優しい生徒が多いのだと思います。

 

姉妹校聖イグナチオ学院について

募金は、特に被災した姉妹校の聖イグナチオ学院の生徒に向けた支援として呼びかけられました。聖イグナチオ学院は2013年に設立された新しい学校です。首都ディリから自動車で40分ほどかかる田舎の村に建てられました。都会で暮らす子弟でなく貧しい暮らしをしている子どもたちに良い教育を提供したい、そこから国のリーダーたちを育てたいという願いがあったからです。また、学校教育が十分成り立っていない東ティモールで、学校教育というのはこういう風にするのだと示すことができるようなモデル校・パイロット校にしたいという大きな志が設立の初めからあった学校です。イエズス会の創立者イグナチオの“大きな志を持つ”という精神は、こういう所にも生きています。実際に、良い教育をしていると聞いて、田舎にあるこの学校へ首都ディリから多くの生徒たちが、通うようになっています。

六甲学院は創立の最初から、学校で使っていた手作りの木製机を送ったり、本や文房具を送ったり、サッカーボールやバレーボールを送ったりしています。六甲学院からは、2014年に生徒として当時高2・高1だった73期・74期生が2名、東ティモール大使館の招待でこの国を訪れています。

聖イグナチオ学院生徒2

聖イグナチオ学院の生徒たち

 

ロックダウン中の洪水被害と援助先の検討

今回の洪水は、特に首都のディリで新型コロナウイルス感染が広がる中で、3月8日からロックダウンしていた最中のことでした。家が浸水して家財道具を失ったり教科書・文房具等をなくしたりしてしまった姉妹校の生徒たちへの支援として、募金は呼びかけの通り姉妹校に、まずは送ります。また、今もロックダウンが続いていて首都ディリに入れない状態の浦神父(かつて六甲学院で教鞭を執り、聖イグナチオ学院の設立当初から現地で尽力されている先生です)も心配されていることなのですが、都市封鎖の影響で仕事を失い、食事や飲料水にも困っている人々への支援もしたいと思います。さらに、東ティモール政府は今回の災害は首都ディリの被害が非常に大きいため、この街に限定して国際支援を要請しているのですが、都市部以上に支援の手の届きにくい人たちが農村部にもいるのではないかと、災害のあった時から気になっていました。私は2014年と2017年に現地に行っているのですが、農村部は都市部とは違う貧しさがあり、通常でも栄養のある食事が取れない人々が数多くいます。

今回の被災地支援にあたっては、そうしたディリ市内や農村部の情報も入るならば参考にしたいと思いました。情報源として頼りになる人が、卒業生の中にいます。東ティモールの教育をテーマに、現地のフィールドワークをしながら研究をしている71期の須藤君です。上智大学の教育学部で修士まで6年学んだあと、今は東京大学の教育学研究科の博士課程に在籍しています。彼に、募金の送金先の候補を挙げてもらいました。私が須藤君にお願いした送金候補の基準は、農村部に向けて支援ができる団体であること、緊急な中で機敏に今必要な支援ができる団体であること、の2点です。その日のうちに5つほどリストを送金候補としてメールで送ってくれたのですが、その中の2か所に、加えて送金できればと考えています。

東ティモール洪水2

東ティモール洪水により苦心する人々

 

2つの救援団体の活動

一つ目は、パルシック(Parcic)というNGO団体です。豪雨被害は東ティモール全域に広がっており、特に河川が氾濫した北部の平地と、強風と地滑りとで多くの家屋が倒壊した西部山岳部の被害が大きいことを伝えています。政府は首都ディリに限定した国際支援を要請していますが、その他の県でも被害が大きいにもかかわらず、支援がまったく入っていない地域もあることを、災害の一週間後には知らせています。ディリ市内の事務所が泥水の被害にあいながらも、被災5日後には避難所の150世帯に飲料水とマットレスを配布し、ロックダウンされていた首都の新型コロナウイルス感染拡大防止措置の規制が一時緩和されると、すぐに山村のマウベシ村まで行って、全壊・半壊15世帯の修繕に必要なセメント・トタン板・鉄筋などの資材を届けていました。

もう一つはPeace winds Japan という日本の団体です。土砂崩れ、道路の陥没、住宅の浸水、倒壊などで25,000人以上が被災していることを報告しつつ、洪水発生翌日から緊急支援として、食料・水・即席めん、乳児支援キット、妊婦支援キットなどを配布しています。また、感染症予防の観点からも、飲料水だけでなく生活用水として水を配布しています。泥だらけになった衣類や家財道具を洗うのに、汚れた川や水たまりなどから汲んだ汚水を使わず、生活用水を使うように呼び掛けています。そして、4月20日には、1,849世帯13,000人にきれいな水を届けたことを伝えています。

こうした支援先への送金は、できれば伯友会や保護者の方々からの募金の一部も充てさせていただけたらと考えています。おそらく、今は聖イグナチオ学院の生徒たちの生活と学習環境を整えることに奔走していて、他の被災者のためにも働きたいと願ってはいても、ロックダウンの影響もあって、直接には市内や山村の被災者救援のために動けない浦神父たちスタッフの方々の思いにも、沿うものだと思っています。

 

OBとの連携と六甲ネットワーク

私たちは、こうした災害時の救援についても、できるだけ持っているネットワークを生かして、多角的に現状を把握しながら、今必要とされている場所へ必要とされているものを届けることが大事だと思います。他国の災害救援でも、六甲学院を卒業した後も同じ価値観と方向性をもって、チームとして共同で働ける人たちがいます。私たちにとって、そうした卒業生は単に教え子ではなく「仲間」です。そして、在校生たちも、こうした卒業生とつながりを持ってほしいと思いますし、将来は世界をよりよくするためにネットワークとしてつながる「仲間」に育ってほしいと願っています。