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校長先生のお話

六甲学院中学校 87期生入学式式辞 校長講話

《2024年4月6日 六甲学院中学校 87期生入学式式辞 校長講話》

六甲学院での「経験」から「夢」を見出す6年間に

 

(1)満開の桜の中で-87期の入学式
 新入生の皆さん、六甲学院中学校へのご入学、おめでとうございます。
保護者の皆様、ご子息の六甲学院へのご入学、おめでとうございます。
ちょうど、桜が美しく花開いているこの日に、入学式が迎えられることを嬉しく思います。
 新入生の皆さんは、六甲学院の87期生となります。
 中学を入学するに当たって、おそらくこの長く急な坂道を、毎日重い荷物を背負いながら、通い続けられるだろうか、という心配から始まって、この学校の習慣になじめるだろうか、とか、勉強にはついていけるだろうか、というような不安もあるかもしれません。その一方で、学校説明会や入学オリエンテーションで案内された広々としたグラウンドや蔵書が充実し眺望も素晴らしい学習センターや、理科実験室・庭園などを知るにつれて、この学校で6年間を過ごせること思うと、期待や希望に胸をふくらませている新入生もいることと思います。

 

(2)一生涯続く先輩と後輩の人間関係-グローバルな広がりの中での成長
 学校生活については、入学オリエンテーションですでに紹介されている中1指導員をはじめとして、クラブや委員会などで世話になる先輩たち、また校舎内で出会う先輩たちに、わからないこと・知りたいことがあれば、聞いてみたらよいと思います。きっと懇切丁寧に答えてくれるはずです。
 特にこの学校の90年近い伝統の中で、はぐくまれてきたのは、様々な日常の学校生活や活動・行事において、先輩と後輩との間で共に成長する人間関係です。先輩が後輩を指導し、世話をし、自分の経験を分かち合い、アドバイスをする人間関係は、これからの6年間の中ではぐくまれながら、卒業してからも長く続いてゆきます。
 例えば、この春休み中の行事、新高校3年生、新高校2年生のうち18名が参加した「ニューヨーク研修」では、最初に到着したアメリカ合衆国の首都のワシントンDCにもニューヨークにも卒業生がいて、アメリカで生活し仕事をすることの意味や喜びや大変さなどを、体験談も含めて分かち合ってくれています。そのうちの一人は、東京大学を卒業した後に中南米の発展途上国のスラムと関わるようになり、ワシントンDCの国際開発銀行の職員として働き、特に現在は中南米カリブ海沿岸の貧困地域に赴いて、経済格差と困窮した生活の改善に取り組む現地NGOのプロジェクト支援活動をしています。
また、昨年6月に初めて実施されたシンガポール・マレーシア研修は、高校2年生全員が参加する行事ですが、そこでも5人の卒業生が海外での自分の仕事について話をし、職場や大学を案内してくれました。そのうちの一人は特に脳の医学研究のために本拠地をアメリカからシンガポールに移して、大学内で研究活動をしており、その広々とした研究施設を見学する機会がありました。
 昨年は初めて、中学3年生から高校2年生の22名の希望者がカンボジアへも研修旅行に行きました。首都プノンペンでは二人の卒業生が生徒たちの世話をしてくれました。そのうちの一人は、京都大学を卒業した後に、国連の支援のもとに行われた民主的選挙に国連ボランティアとして参加したことをきっかけに、カンボジアと30年以上にわたって関わっています。戦乱で荒廃した後の国の復興のために、主に現地に秩序をもたらす法律の作成に携わっています。日本国内でも同様で、東京・大阪など行く先々で、進路について考えている後輩たちに、親身になって話をし、職場を案内してくれる先輩が数多くいます。
 生徒たちはそうした学校内から世界への広がりの中で活躍する先輩と交流し経験を見聞きして、進路について考え、自分なりの希望や使命を見出したり、こういう人になりたいという「めざす人間像」を見出したりして、その目標に向けて成長してゆきます。

 

(3)海外のイエズス会姉妹校のつながり-交流経験から進路選定へ
 こうした世代を超えた先輩・後輩とのつながりの深さは、六甲学院の最も大きな特徴の一つです。それとともに、六甲学院はイエズス会学校として、世界中の姉妹校とつながり、ネットワークを生かした教育活動をしています。アメリカ合衆国のワシントンDCには、イエズス会の運営する世界的にも有名なジョージタウン大学があります。今回の訪問で大学案内の世話をしてくださったのは、かつて六甲学院で働かれていたアメリカ人イエズス会司祭ファージ神父の友人でした。ニューヨークでは、イエズス会系列の3つの高校、フォーダム高校、セントピーター高校、クリストレイ高校と交流する機会があります。カンボジア訪問旅行でも、生徒たちはシソフォンという地方の町にあるザビエル学院という姉妹校を訪れ、交流する機会を持ちました。
 先輩との交流の中では、先輩たちの貴重な海外経験を話してくださいますし、姉妹校交流では、世界で同じ教育方針のもとに学ぶ生徒たちとの交流そのものが貴重な経験になります。そうした他者の経験に学んだり、自分たち自身が経験することを通して、生徒たちは、自分たちなりの将来の夢や希望をもち、進路を選んでゆく生徒が、六甲学院の中では比較的多いように思います。

 

(4)今年の中学入試国語問題-東大2023年入学式祝辞から
 今年、2回の中学入試、国語の長文問題4問の中で、昨年4月12日の東京大学の入学式の祝辞の文章を扱った出題がありました。馬渕俊介(まぶちしゅんすけ)という方の祝辞です。彼は「世界の貧困や感染症に立ち向かう仕事」に従事してきていて、最近では「新型コロナのような感染症の壊滅的な大流行を二度と起こさないための国際システムの改善を提案」しています。「世界の感染症対策をリードするグローバルファンドという国際機関」に所属して「途上国の保健医療システムを強化して、感染症のパンデミックを起こさないように備える」部局のリーダーをしています。東京大学に入学した学生に向けて、「夢」についてと「経験」について、話をしています。彼自身が入学したときに決めたことは「人生をかけて取り組むことを決めたい」ということだったそうです。

 

(5)途上国の理不尽さの体験から抱いた「夢」
 大学の授業でパプアニューギニアの先住民の儀礼を映像で見て、その美しさに感動し、異文化に飛び込んで学ぶ文化人類学者になりたいと、はじめは思っていたそうです。しかし、実際に途上国に行って見たことは「子どもが病気になっても医者も薬もない状況、毎日重労働と日焼け、栄養不足でおばあさんのような顔をしている若いお母さん、地域に根深く残る差別から仕事の機会がなくて、くすぶっている同年代の若者など」の多くの理不尽だったそうです。「自分は、学者としてそこから学ぶだけで終わりたくない。人々が自分たちの文化に誇りを持ちながら、理不尽と戦って、  日本なら簡単に直せる、あるいはかかることもない病気に命や可能性を奪われずに人生を生きられる、そのサポートをしたい」と思うようになったということです。彼がこのとき抱いた夢が、その後の人生の中で形になって、今も続いているという話です。そして、入学した皆に「夢に関わる、心震える仕事をしてほしい」「夢は、探し続けて行動し続ける人にしか見えてこない」という2つことをアドバイスとして伝えています。

 

(6)「経験」の組み合わせから危機を乗り越え問題解決へ
 もう一つのテーマ、「経験」についてですが、彼は西アフリカで2014年に大流行したエボラ出血熱の緊急対策チームのリーダーを任された時の話をしています。感染者の半数が死に至るという恐ろしい感染症です。緊急対策にかかる費用を迅速に運用できるような仕組みづくりをし、感染が広がりやすい死者の埋葬について「現地の人たちの大切な価値観」を尊重しつつ、感染リスクのない「安全な尊厳ある埋葬」の方法を、話し合いのすえ見いだして、爆発的に広がっていた感染が一気に落ち着いたそうです。立場の全く異なる人たちが話し合いの場を持ち、自分もそれまでしてきたいくつかの重要な分野の経験を組み合わせることで、危機的な状況を乗り越え問題解決をすることができた、ということです。そして、彼はこのときの経験から、貧困や感染症、気候変動のような世界の問題に立ち向かうにあたって、問題が複雑に込み入っていて本当に自分のしていることが問題の解決に役立つのかと思うことがあっても、「世界は変えられるんだ」という希望を持つことができたと言います。六甲学院の入試問題として、こうした内容の文章が選ばれるのは、六甲のめざす方向性と繋がっていて、受験する生徒たちにぜひ読んでほしいという思いがあるからでもあります。

 

(7)六甲学院での「経験」から人生をかけられる「夢」を見出す
 六甲学院の教育モットーは全世界のイエズス会学校共通の「他者のために、他者とともに」生きる人間、“For Others, With Others” です。昨年の東京大学入学式のこのメッセージは、そのまま“For Others, With Others” をめざす六甲学院の生徒たちに当てはまるように思いますし、今の若い人たちに向けての普遍的なメッセージでもあるように思われます。そして、六甲学院においては、「夢」を持つにあたっても、現場で様々な「経験」を積むことについても、すでに中学時代から、歩み始めることのできる恵まれた環境にあります。日常の生活の中で接する先輩との交流からはじめて、フィールドワークや社会奉仕活動や研修旅行など、グローバルな経験も含めて様々な経験の機会をつかみ、生かしてくれたらよいと思います。また、学校の進路の日や、国内海外の研修旅行を通して、先輩たちの物事に取り組む姿勢や、先輩がどんな選択を経て今の道を歩んでいるか、などを学んでほしいと思います。そして、そうした夢や経験を見聞きする中で、自分にとって人生をかけてしてみたいことや「夢」を、これからの6年間で見出してくれたらと願っています。